2009年9月28日 声をたずねて世界旅《アラスカ編》13

夜、暗くなってから、初めての温泉へ行く。
重い防寒具をつけて、ギシギシと靴音をたてながら、温泉館に向かう。
防寒具のせいで、重くてすぐ疲れてしまうので、なかなか温泉に入る元気が出なくて、後になってしまったのだ。
この着ると熊のようになってしまうぶ厚い防寒具は、つなぎのような吊ズボンの上から上着を着るので、脱ぎ着に手間取り、時間がかかって困るのだ。
すぐに防寒具を脱いで、温泉に入る。大変だ。中には、丸いジャグジー風呂と、小型の長方形のプールの様な浴槽。
男女混浴で、もちろん皆水着を着けて入るのである。
露天風呂は外にあるらしいのだが、のぞいてみても暗くて見えない。かなりそこまでは歩かなければならないようだ。ああ、この厳寒の中を、と考えただけでふるえあがってしまう。
ジャグジーの中には、台湾人の女の子が一人入っている。お湯の中に顔のすぐ下までつかって、寒そうに顔をしかめている。
長方形の浴槽の方に数人がいて、6ヶ月位の赤ん坊をつれた若い夫婦が入ってバシャバシャやっている。
「どこの出身?」と聞くと、
「メキシコ」と言う。
よくもまあ、自分一人でさえももてあます、こんな厳寒の地へ、そんな小さい赤ん坊をつれてやって来たものだと、あきれたり、感心したりの私。
台湾人の女の子に、
「露天風呂に行く?」
と聞いたら、即座に大きく首を振って、とんでもないという風に、
「ノー!」
と言った。
・・・・・・そうだろう、零下四十数度の雪の上を暗闇の中、はだしで歩いて、かなり離れた所まで・・・・・・!
私も躊躇していたが、せっかくこんな所まで来て、露天風呂へ入らないなんて、露天風呂大好き人間を自認するこの私を、許せなーいと思い、ようくジャグジーで暖まってから、思い切ってぬれた水着のまま、そっちへ突進した。その水着が冷たくなりかけたころ、30mほど突っ走った所に、薄暗い中に池のような露天風呂が見え、私は思いっきりジャブジャブと入って行った。
「あったかーい!!」
意外と適温のお風呂であった。
「あーっ、ゴクラクーッ!!」
外は真っ暗で、まわりの景色は全く見えない。足の下には、やわらかく砂地が広がっているようだ。
見渡すと人の気配はあるのだが、奥の方に人影があるような、無いような・・・・・・。
暗いと少し恐いような気がする。
お湯の中でしっかりと体を暖めてから、また雪の上を走って戻り、ジャグジーに飛び込んだ。フウッ・・・・・・!
その夜も、前夜と同じでオーロラは小さいまま。
「あーっ、あーっ!何とかしてーっ!」
ま、多少大きくなったり、小さくなったり、左右に移動したりしているのだが。
色も黄色と緑だけ・・・・・・!(ガックリ)