2009年10月4日 声をたずねて世界旅《アメリカ編》19

――今日は、チェナ温泉四泊目の日――
今日もまた、セスナ機は、出発できないと言う。ビーバー村は零下50度位になるらしい。
行っても、こちらへはいつ帰ってこられるのかわからないと言う。セスナ機のエンジンが凍りついて飛び上がれないということだ。
ああ、それでは、日本へは当分帰れなくなるではないか!
残念だ!残念だ!本当に残念だーっ!
ただ、セスナ機で、アラスカの上空を飛ぶことは出来るという。
早速、それを申し込む。夕方になるらしい。
ちらと見たところ、スレンダーな中年の女性のパイロットさんだ。女の人でこんな仕事が出来るなんて、スゴーイ。
仕方が無いので、今日は午前中から温泉に入ろうと思う。
今回はチェナ温泉四連泊の最後の日。
本当は毎日温泉に入りたかったのだが、防寒具が重かったりして、疲れてしまい、気合が入らなかったのだ。
ジャグジー風呂にゆっくりとつかる。朝なのですごくすいている。
温泉館の入口で、5、6人の若い男女が、元気に騒いでいたが、彼らがこっちへ入ってきた。
白人のグループで、中に年配の男が一人混じっている。
じっくりと暖まってから、例の露天風呂へ駆け込もうと思って、顎までお湯につかっている私の横を、彼らがドヤドヤと賑やかに通り過ぎていく。
あれーっ!?あったまらないのーっ!?
私は仰天した。
――何と、何と、彼等は、一度もお湯に暖まらずに、裸同然の水着のまま、ドアを開け、露天風呂のほうへ向かうではないか!!
そんなに急いで走ったりもせずに・・・・・・!!
寒くは無いのだろうか?
ああ、零下四十数度の中を!!
体を十分暖めてから、私も露天風呂を目指す。
一目散に走って・・・!
露天風呂の眺めはすばらしかった。
遠くに連なった山々、そして大きく広がっている林。かなり広い池ともいえるような露天風呂だ。
冷気が体を刺す。
ああ、何て清々しく気持ちがいいのだろう。
池の真ん中の方で、さっきのグループが泳いだり、ふざけあったりしている。
私も少しだけ泳いでみる。
私達の他は、ほとんど人がいないようだ。
下を見ると、池の底は透明で、ずっと心地よくきれいな砂地が続いているのが見える。
ふと私は彼らに近づいた。
「どこのご出身?」
「フェアバンクス!」と即座に返ってきた。
少し遠慮っぽい声だった。
土地っ子なのだ。アラスカっ子はちょっとシャイなのだろうか?
とにかく彼らを目の当たりにして、私は白人と我々日本人とでは、体温が違うのだと悟った。
白人は我々アジア人より1度は高いと聞いてはいたが、今の様子ではもっと高いのではないかと思った。
2度?3度?・・・・・・。
体のつくりが我々とは違うのだろう。
ま、白人とアジア人が、ルームシェアした場合、夫婦ででもなければ、必ず一緒にいられなくなって、片方が出て行くという話を聞いたことがある。
それは、やっぱり体温の差が原因であるとか。
窓一つ開けるのも、エアコンの温度を設定するのも、この体温の差があって難しくなるそうだ。
今、それを目の当たりにして、驚いてしまっている私。
本当に信じられない。こんな寒さの中を、お湯にもつからずに、そのまま離れた場所まで平気で歩いていくとは・・・・・・!
――そして思った。
やはりアフリカで発生した人類は、寒さに強い、つまり体温の高い者は北の方のヨーロッパに流れて狩猟民族となり、寒さに弱いアジア人は、肥沃な土地で農耕民族になったのだと。
そうそう、アジア人は、この日本人である私もよく風邪をひくのに、白人系は、あまり風邪をひかないもんね、本当。せきをしたり、鼻をかんでいる白人なんて、ほとんど見たことないもの。
そして、日本人、アジア人は、あのジャグジーの台湾の女の子みたいに寒がりなのに、白人系は冬でも半袖で歩いたりしているものね。(うーん・・・・・・!!)
きっと狩猟の際も、野宿にも耐えられるのだろうね。
――午後、セスナ機に乗り、アラスカの上空を飛ぶ。
かの女性パイロットの他は4人乗りである。
いやーっ、飛べども飛べども、眼下は雪のツンドラ地帯。あまりにも隔たりなく、凍りついた雪原が広がっているのみ。白い雪と黒っぽい木々が模様のようにどこまでも続いている。
ただ一つ、あのマッキンリーの山が白く光っている。
美しーい!!
ふとパイロットが指差す。よく見ると冷たく広がっている雪原の中に、一本、アラスカの石油のパイプがずっと延びている。・・・・・・これぞ有名なアラスカの石油のパイプライン!
どこまでもどこまでも、雪原を貫いて・・・・・・。すごーい!!